白ねずみの本棚

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『真面目なのに生きるのが辛い人』【読書感想】ネットには無い見解が新鮮だった

真面目なのに生きるのが辛い人

作品情報
タイトル『真面目なのに生きるのが辛い人』
著者 加藤 諦三
発行年 2013

本作のお気に入り度は
4/5★★★☆☆

 

感想

少々語り口が古臭い気がしたが、興味深い内容が多く書かれていた。

断定系でズバズバ書かれており、こんな事をバッサリ言い切って、反発を招くのではないか?と思う箇所もあったが、

それ以上にためになる話が多く私は満足した。

 

メンタル系の情報はネット上でも豊富だが、

本書の内容はあまり見聞きしないものも多く、新鮮味を感じた部分が多々ある。

 

本書は心の問題を抱えて「苦しい!助けて」と叫ぶ当事者に

「自分のことだ!」とピンとくるエピソードが豊富にあると思う反面、

堅めの文体で、若干厳しめともとれる内容もある。

本当にどん底にしんどい時は読む気が起きないかもしれない。

心を休める目的よりは、少ししんどいが前を向きたいと思っている時に、

現実を理解し、自己改善のきっかけをつかむことを目的に読むのが良いかと思う。

 

タイトルから想像する内容とは違う、良い意味で意外な話が書かれていた。

 

 

攻撃的な人、人を責める人は、自分の中の不安に勝てない精神の土台の弱い人であり、

標的にされるのはやさしい人である。

一見正しい理由をつけようともそれは口実にすぎず、

やさしい人に甘えたい欲求が、攻撃という形で発現している。

攻撃は甘えなのだ。

そういう人は冷たい人のことは責めない、むしろ従順に従う。

もし読者がやさしい人なら、この事を知ることで、

犠牲になり病んでしまうという悲しい事態を避けられるかもしれない。

 

攻撃的な人にとっては、耳に痛い話が書かれているが、

幼少期に親に甘えられなかった、不安だった、などの生い立ちからくる、

自分の中の無意識の辛さに気づくかもしれない。

「お前が悪い!」と強迫的にいつも誰かを怒っている人は、

この本を読むと恥ずかしい気持ちになるかもしれない。

しかし、人生がいつも不満だったり、生きるのが辛い、

ささやかな幸せが分からない、人を従わせないと気が済まない、

お金や権力といったものに人並み以上に執着するが不安だったり、

いつもどこか満たされない、などといった苦しみから脱するヒントになる。

 

その他印象的だった箇所

・『「女が憎い」「女を殺したい」と言うある人は、しかし女に依存しなくては生きられない人だった。どうにもならない「人間依存症」である。

男として自信のない男が女を軽蔑する。』

といった刺激的な例も記述されている。

近年一部で問題となっている「インセル」や、インターネット上での「女叩き」といったものを彷彿とさせる。

 

・「このようなどうにもならない苦しみにおちいっている人たちが、

DV、児童虐待、カルト集団に入る、薬物やアルコール依存、鬱病

はたまた殺人事件を犯すなどの問題を起こしてしまう事もある。

重大な過ちを犯す前に、自分のしていること、人を傷つけた事に気づく事が、

見えている世界を変え、苦しみから解放される、解決への道筋である。」

 

・「生真面目なうつ病病前性格が、心の奥深くに秘めた激しい甘えの欲求の反動であり、

表面上は穏やかだが世間に敵意を持っている。

そして、世間を見返したいと頑張るしかなくなる。

生きていくためにその敵意は放出しなければならないが、

それは本人にとっては大切なものでもあるので、放出すれば大切なものを失ってしまう」

という部分には自分も共感するものがあった。

 

・「子供の良いところに興味がなく、ダメな部分だけに注目する母親がいる。

人生の暗い見通しばかり説教された子供は、生きるのが辛くなる。」

恐ろしいことだが、当てはまると感じる人は案外多いのではないか。

 

・「そもそも日本人は、そのような「ネクロフィラス(死を愛好するの意味。過去にとらわれる)」な傾向の人が多い」

と言われれば、そんな気がしないだろうか。

「ネクロフィラスな人は、生きている草花よりも、機械、テクノロジーに興味を持ち、

成功を求めるので、社会的には権力を持っている人も多い。政治家にもいる。

金でなんでも買えると言うような人だ。

しかしその本心は絶望しており、アルコールなどの依存症を抱えている人も多いという。」

この文章には賛否あるだろうが、興味深い話だった。

 

・「自己蔑視している人は、人を愛する事ができない、

人からどう思われるかで行動する」

など、その他にも興味深い話が続く。

コンプレックスを抱え、名誉や成功を求めるが実りが感じられず、

どんどん大人として成長していく周囲に置いていかれる感覚を抱く

夢追い人、一発逆転思想を持つ社会的弱者に重なる話も出てくる。

 

ちなみに本書では「男女の友情は成立するか」という

よく言われる問いにばっさりと結論を出している。

著者は世を徹して議論した高校生時代を未熟だったと振り返る。

 

・「自己蔑視から自己防衛する人は、傷つかないように、

人から評価されるために体を壊しても頑張るが、

幸せになれないし人にもいい気分を与えない。最後に待つのは挫折である。

健康な心の人は、興味関心や愛情を動機に自己実現するし、

仕事のために自分の体を大切にする。

自己蔑視のあるひとは問題を避けようとするが、

問題は誰にでも起きるものでで、

心が健康な人は、その時その時のそれを解決していく事で成長し充足していくし、

楽しんで努力している場合、周囲の人も楽しくなる。」

自己蔑視のある人間にはこれが難しいのだが、

事実だと思うし、ハッとした箇所である。

 

・「世界が敵に感じている人は、最後は身を滅ぼす。」

もっともである。

 

・「人は幸せより安心を選ぶ、不安より不満を選ぶ」

とは、確かにそんな感じがする。

 

いじめられても助けてもらえなかった、親に甘えられなかったなど、

幼少期に安心感が得られなかった人で、一見真面目に生きているが生きづらさを抱えている人、

逆境から一発逆転を狙うが失敗した人などに、

一読をおすすめする。

 

誰も自分を守ってくれる人はいない。

そんなふうに無意識に思っている人は多いと思う。

だからたくさんの人が代わりに神を信仰するのではないだろうか。

 

しかし、世の中に十分な愛情と安心感をもらって幼少期を過ごした人は

どれくらいいるのだろうか。

自分も人も好きになれず信じられず、人に頼れず、

表面的な成功を重視する人は世に溢れているように感じる。

よってこれは、個人的な問題ではなく社会的な問題とも思える。

 

上の内容は自分向けに適当にはしょったメモなので、

詳しく知りたい方は本書を読むことをお勧めする。

 

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